「みやぎ農業見聞のつどい・秋」を開催しました

~就農希望者が石巻市と東松島市の先輩農業者を訪問~

 

 去る10月27日(土)に当公社と宮城県、県農業会議、JA宮城中央会の共催により「みやぎ農業見聞のつどい・秋」が開催され、就農を希望する男女13名が参加し、先輩農業者のほ場を訪れ、視察研修や意見交換を行いました。
 また、東松島市で就農を希望する人の宿泊施設でもある宮戸の新規就農者技術習得管理施設「あおみな」を見学しました。
 今回のつどいの概要をご紹介しますので、是非、就農ビジョンやイメージの具体化とともに、計画検討の参考として下さい。

 
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◎視察園1 石巻市河南 亀山晴花園 亀山 晴央 氏 40歳  視察園概要は → こちら
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1.就農までの経緯
 茨城県日立市で育ち、大学では、農業土木を専攻。卒業後は建設会社に勤務したが、転勤が多く、夜も遅い毎日であったことから、両親の実家のある宮城県での就農を決意した。
 就農にあたっては、石巻農業改良普及センターに相談。石巻管内の生産状況や農家を見学した後、花き農家の手嶋一郎氏(涌谷町)のもとで1年半研修を行った。
 研修中は、肥料の量や水の管理など、しつこい位に聞いたり、研修先と同じものを自宅に持ち帰って、生育を記録するなどの他、参考書などで情報収集に努めた。独立後を考えた労力と作業のシミュレーションには、前職の経験が活かされ、この資料が現在も経営のテキストとなっている。県外に研修先を求める人もいるが、自分にとっては、師匠が近くにいることがすごく良かった。
 2006年に独立就農。母方の祖父の水田20aを借り受け、埋立整地の後、中古の鉄骨ハウスを解体・移設した。他に暖房機や資材購入費として、借り入れた就農支援資金約1,000万は、12年目の今年で完済。就農と同じ年に結婚。2011年に家を新築し、現在は、妻子・両親と同居している。
 
2.受賞と廃業危機 
  2011年全国シクラメン品評会最優秀賞受賞・2014年東北鉢物生産組合品評会最優秀賞受賞 
 気をよくして栽培に励んでいた矢先の2015年、培養土が値上がりし、仕入れ先を替えたところ、根こぶ線虫にやられてシクラメンが全滅!!農業をやめることも考えたが、300万円を借り入れてどうにかしのいだ。袋入りの土に何の疑問も持たずに使ってきたが、この件があってから、土壌消毒機(新品なら300万→ネットで30万位)を購入し、全ての培養土を蒸気消毒してから使用している。これにより以前は、1割ほど病気で廃棄となっていたが、現在は無くなった。
 
3.栽培のこだわりと販売  
 シクラメンを中心にクリスマスローズやラベンダー、あじさい等を施設と露地で栽培している。シクラメンは、ジベレリンなどのホルモン剤を使用せずに栽培することで、花が順番に咲き、長く楽しめる。販売は、仙台・東京・埼玉・名古屋への市場出荷が9割を占める。仲卸の担当者との直接やりとりで「亀山晴花園」の指定で前年に予約が入る。それは、受賞したことより、発色の良さと店頭に長くおけることが、花店から評価されているようである。
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 作り手の差…株のしまりや発色の良さ…が出るのは、スタンダードな品種であり、やりがいでもある。
 栽培方法等、新しいものに挑戦するのは、師匠の手嶋氏のほうで、自分は、他の生産者を参考にはするが、ガラッと変えることはせずにいいとこ取りに留めておく。
 種を購入する際、天候や年によってバラツキがあることや病気等のリスクを避けるため、育種家を一人だけ選ぶことはせず、複数人から購入している。
 
4.現在~今後について  
 当初は、両親に手伝ってもらったが、現在は妻と二人で作業しており、二人では、この規模(施設500坪、露地400坪)が限界かと思う。妻の労働力は重要であり、感謝している。
 規模拡大は考えていないが、売上げは、伸ばせると考えており、雇用や法人化も検討したい。
 やり始めたら走るしかなく、会社を辞めたことを自問自答した時期もあったが、今、振り返ってみると農家になって良かったと思う。「楽しい」と思える毎日である。
 
 
◎視察園2 東松島市 村岡 弦 氏 31歳  視察概要は → こちら
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1.独立就農までの経緯
 東松島市矢本生まれ。建設業の仕事に従事していたが、業界に限界を感じていた。そんな時、友人の話から「お金になりそう!」と(株)イグナルファームに2016年に入社した。
 農業の経験はなかったが、入社後すぐに独立宣言し、入社3ヶ月後の本採用時から、キュウリ部門を担当。上司の指導のもとで2反歩のハウスを任され、選別以外は全て一人で作業を行い…通常は最低でも二人は必要と言われている…農業技術を身につけた。
 そして、就農して約2年となる今年9月に管理を任されていた東松島市赤井の6連棟のハウス1,776㎡で独立就農した。現在、農業次世代人材投資事業(経営開始型)を手続き中である。
 イグナルファームに雇用就農し、キュウリを担当して良かったと思う。
 
2.独立の準備
 雇用されてから管理を担っていたハウスと農地は、イグナルさんが賃借していたが、独立にあたって、所有者から直接、借りる手続きをした。
 機械類については、イグナルさんとレンタル契約を行い、他に軽トラック、苗、肥料の購入など、初期費用として350万円を借り入れた。
 トマトやネギが決められた一定のルールでの栽培であるのに対して、キュウリは、やり方が人それぞれで、センスが問われる作目だと思った。「これは儲かる!」とキュウリを選んだ。主にJA(農協)に出荷している。
 基本的に作業は一人で行っており、今のところ選別も一人で行っている。
 
3.農業の面白さ 
 1日の作業は …朝5時半に起床~6時から収穫作業3h~昼休憩~暗くなるまで手入れ~出荷準備(選別・調整)
 ・・・怠け者には出来ません!
 農業は奥が深く、極めがいがあるところが面白い。毎年、天候など自然条件が変わり、同じ作業が効かないことが多い。でもそれに対応して、手を掛けた分だけ応えてくれる。手を抜けば、いくらでも抜けるが、品質が下がる。
 一番のやりがいは… 「頑張ったら頑張った分だけ収穫につながる。努力を裏切らないところ」
 毎日の観察からくる気づき、栽培の工夫など小さい技術の積み重ねが収量の差となって表れる。
 きついけれど頑張りは金になる。
 
4.栽培の工夫と将来の夢
 全てに工夫が必要。何かをしたらすぐに結果が出ることはない。小さい技術の積み重ねで目標が達成できる。毎日、確実にやり続けることが収量につながっていく。
 キュウリで有名な埼玉の松本充先生(この植物をわかっている人との出会いも大きい)の研修会や環境制御の勉強会にも参加し、情報収集している。
 この地域の1反(10a)あたりの収穫の平均は20トン前後であると思うが、去年、イグナルファームでは、30トンだった。これは、日本トップクラスだと思うが、将来の夢は・・・
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◎視察園3 東松島市(株)イグナルファーム 阿部 聡 氏 40歳 視察園概要は → こちら
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1.法人設立の経緯
 東日本大震災で被災した東松島市。大切な家族、財産、生業を奪われ、農地や園芸施設に壊滅的な被害を受けた4人の若手農業者が農業の復興と持続可能な地元農業の発展の実現のため、平成23年12月「株式会社イグナルファーム」を設立した。この社名には、全てが「共にイグナル(良くなる)」ようにと願いが込められている。
 
 
 
2.経営の概要(H29実績より) 
 ○事業内容 ミニトマト・キュウリ・イチゴ・ネギの生産・販売(イチゴは加工も行う)
       ※東松島では、キュウリとイチゴ栽培が主となる。
 ○雇用状況 社員6名、パート34名。ほか役員5名
 ○生産量  ミニトマト(5,000㎡)85トン キュウリ(8,000㎡)220トン
        イチゴ(14,000㎡)85トン ネギ(16,000㎡)40トン
 ○販売先  市場(行き先は決まっている)、仲卸、セブン&アイ、ローソン、イオンほか
        ※ローソンと共同で「(株)ローソンファーム石巻」も設立運営している。
 
3.生産のこだわり  
 販売先によっては、鮮度重視で大きさバラバラのワンタッチ収穫での買い取りもある。
 ハウスは冬場の冷気対応で空気膜二重被覆構造になっていて、燃料費を約70%削減している。
 土壌の消毒などのコスト等を考え、ベンチ栽培を行っており、キュウリの養液栽培は珍しい。
 
4.安全安心へのこだわり
 平成26年にグローバルGAPの認証取得。食品の安心安全、自然環境の保全、適切な労働環境に配慮。事故が起きた際に責任の所在を明らかにして、生産者リスクを減らすためにGAP取得は必要と考えている。(ASIAGAP、JGAPも認証取得済み)
 
5.今後の経営と展望20181027_tudoi_photo7
 この秋、(株)イグナルファーム大郷(阿部社長)でミニトマト、ネギの事業が始まり、高度環境制御栽培施設10,000㎡の建設など事業が拡大している。
 ICTを導入した園芸施設(ハウス)の複合制御栽培によるスマート農業で、空調を自動制御し、情報の共有化ができる。
 これにより、1年間研修しても作業の流れしかわからないことも多い「農業」を数値として、新規で始める人に教えることが可能となる。
 
6.雇用就農について  
 現在、求人募集中で雇用就農者を指導する体制が整っている。独立希望者も応援していて、技術支援はもちろんのこと、ハウス建設や農地探しの際に自治体等への相談に同行するなどの協力も行っている。
 独立後の全量買い取りも行い、販売の心配はない。独立就農者とのグループ会社化も考えている。将来的には、農産加工や観光農園なども視野にいれており、今後、それぞれに人材が必要となると思われる。
 
→ 求める人材・・・目標実現の信念がある人~探究心旺盛な人~
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★「どのような農業をやりたいか」を自身の中で明確にして、計画を具体化すること!
★就農には、強い気持ちが大事!
 「○○万売り上げる!」「会社で一番になる!」など目標が必要。
★今が農業のビジネスチャンス!~やるか、やらないか~農業を目指してほしい!

 
 **参加した皆さんの感想**

 ・それぞれの先輩農家の方のスタイル、規模感など目指すところを聞くことができて良かった。
 ・基本は大事にしながら日々、創意工夫をしているところが、とても参考になった。
 ・先輩農家の話から、憧れだけでなく、利益の出る農業をプランする厳しさが伝わった。近日、農業普及センターに相談に行きたい。
 ・実際に農場を見学し、農業者の説明を聞くことで、自分が考えていたこと、描いていたこととの違いが明らかになってきた。就農への計画をもう少し具体的にできるよう努めてみたい。
 ・始めた背景は様々で、大変な仕事であるが、ビジネスとして将来性があると感じた。
 ・関係機関の「作るものを決めて数値に表して相談する」という言葉が印象に残った。
 ・農業法人への就農も有意義な選択肢と思うようになった。参加は、貴重な機会となった。
 ・参加して、見るもの、聞くこと全て参考になった。3名の先輩農家さんの貴重な話を胸に次の一歩を考えたいと思った。

 
 など、先輩就農者のお話しが大きな刺激となったようです。
 今回の「つどい」が、就農への一助となることを願っています。

 
   
お問い合わせ先

担い手育成班 :吉川(よしかわ)
TEL:022-275-9192